知床自然センター周辺でGPS標識を取り付けたヒグマたちは、9月上旬現在で3頭。いずれも子供を連れていない大人のメスです。彼女たちのこれまでの動きがおおよそ見えて参りました。

ヒグマのメス3頭の6月から8月後半の位置

お示しした図は、初夏から8月後半まで最新のGPSシステムが人工衛星の信号を使って刻々と変化する彼女たちの位置を測定したものです。6〜7月、主に海岸近くの低いところで生活していた彼女たちは、8月に入って羅臼岳から硫黄山に至る知床連山の高標高の場所をしばしば使うようになってきました。その傾向は3頭とも共通していました。
しかし、個体ごとの違いも明瞭です。ピンク色の点のメスは観光客で込み合う知床五湖付近で主に生活しており、かつては頻繁に目撃された年もありましたが、どうしたことか今年はあまり人前に出てきませんでした。うす茶色の点のメスは、知床自然センター付近を中心に生活しています。彼女は一昨年岩尾別川沿いの道路のすぐ近くに冬眠して子供を産みました。人前で平気で授乳までするという、最近知床に多い人間をさっぱり気にしない新世代型のクマで、今年もしばしば目撃されました。一方、黄色の点のメスは、測位点の集まり方を見て頂ければわかるとおり、道路近くにはあまり近づかず、ほとんど人前に姿を現しません。昔のヒグマたちのように人目を避けて生活する、いわば「旧世代型」のヒグマのようです。ヒグマたちも個体によってそれぞれ個性があり、そして、年によっても生活のパターンを変えるようです。それらの違いは何によって生じるのか? それはまだ十分に解明されていません。森に生きるヒグマたちの生活の謎。「知床キムンカムイ・プロジェクト」は、これからもその解明に迫っていきます。


  (財)知床財団 統括研究員・事務局長 山中正実
http://www.shiretoko.or.jp/ http://www.shiretoko.or.jp/ZAIDAN.HTM


知床の自然環境を調査・研究している知床財団が、「知床キムンカイ・プロジェクト(仮称)」を始動させます。ヒグマをはじめ野生動物の高密度生息地である知床は、世界自然遺産の登録による観光客増加から、人間との接近事故が心配されています。プロジェクトは問題解決へ向け、北海道内の専門家らがチームを結成し、2006年度から3年計画にて実施。GPS(全地球測位システム)にて、ヒグマの行動追跡ほか、体毛を採取してDNAを分析し、親から独立したクマがどのように移動しているかなども調査します。AIR DOは、ヒグマとヒトが共に生きる道を探る、安心して暮らせる知床を目指して、この活動を応援していきます。

 
 
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