知床のヒグマの密度は世界でも有数です。中でも超高密度にヒグマが生活している森を歩いてきました。この森で私たちはすでに40頭近いヒグマを確認しています。川沿いで魚を獲っている奴、親子でのんびり倒木を枕の昼寝を決込んでいる奴など、そこら中にヒグマがいました。北の海からの恵、サケマスをたらふく食べて、どのクマも丸々です。これ以上太ったら、お腹が地面をこすりそうというものさえいます。森の中には、足跡、寝跡や糞など、彼らの暮らしぶりがわかる痕跡もいっぱいです。万一、ばったり出会って、彼らを驚かせたり、怒らせないように、「ホイホイ」と声を出したり、手を叩いたりしながら慎重に進みます。彼らの生活を垣間見ながら、ちょっと緊張感のある森歩きを楽しんできました。
森で見つけたヒグマの頭骨
その森の中で白骨化したヒグマを見つけました。骨の特徴から壮齢のオスの骨だとわかりました。なぜ死んだのだろう、メスをめぐる繁殖期の争いか、それとも何かの病気か、想像は膨らみます。いずれにせよ、彼は知床に生まれ、また知床の森の土へと帰っていったのです。それは彼にとって、とても自然な一生だったでしょう。
一方、今年は長野県・富山県・福島県等など、全国各地でクマ出没が劇的に増えてたいへんな問題となっています。クマによる負傷者数は全国で120人を超えて過去最高、死亡事故も発生しました。人間に殺されたクマの数も、史上最高の4000頭に迫る勢いです。とても悲しい現実です。彼らは人を見れば好んで襲いかかってくるような動物では決してありません。きちんとつき合い方を学べば、ものすごい密度のクマがいる森の中でも、静かに歩くことができるのです。知床財団では、クマとのつき合い方をホームページで紹介しています。是非一度ご覧ください。
この文章が皆様のお手元に届くころには、ヒグマたちは春までの長い眠りに入り始めているはずです。クマも人も平和に暮らし、森に生まれたクマたちが、再び森の土にもどることができる知床を私たちは目指しています。


  (財)知床財団 統括研究員・事務局長 山中正実
http://www.shiretoko.or.jp/


知床の自然環境を調査・研究している知床財団が、「知床キムンカイ・プロジェクト(仮称)」を始動させます。ヒグマをはじめ野生動物の高密度生息地である知床は、世界自然遺産の登録による観光客増加から、人間との接近事故が心配されています。プロジェクトは問題解決へ向け、北海道内の専門家らがチームを結成し、2006年度から3年計画にて実施。GPS(全地球測位システム)にて、ヒグマの行動追跡ほか、体毛を採取してDNAを分析し、親から独立したクマがどのように移動しているかなども調査します。AIR DOは、ヒグマとヒトが共に生きる道を探る、安心して暮らせる知床を目指して、この活動を応援していきます。

 
 
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