北海道の山歩きで最も注意しなければならないのは、ヒグマの親子連れに出会う事と言われています。母グマはとても神経質で、至近距離で人に出会ったりすると、子グマを守ろうとして攻撃的になるからです。だけど、母グマもいろいろ。知床では、人のすぐ目の前で、親子共々安心しきって昼寝を決めこんだり、ごろんと仰向けになっておっぱいを与えるような、のんびりお母さんもいます。
ある時、私は知床の美しい海岸を堪能しながらシーカヤックの旅を楽しんでいました。その時、波打ち際にヒグマの親子を見つけました。カヤックをこぎ寄せた私に、気づいた母グマはびっくり仰天。あろうことか、まだ足元もおぼつかない小さな子グマたちを残して、すたこらさっさと逃げだしました。母グマは遥かかなたまでどんどん逃げ、森の中へと消えていったのです。別な日に、この親子はいっしょに歩いているのを見かけたので、後から母親は戻ってきたようですが、冷たい母親もいたもんだと驚いたものです。でも、普通の母グマは、人が近づくと不機嫌極まりない表情になり、怒りだします。親子グマには近づかないのが、北の森の鉄則なのでご注意を!
母は強しと言います。クマ社会の中でも強い母もいれば、弱々しい母もいます。知床のサケマスが産卵する川にはヒグマたちが集まり、彼女らの人間模様ならぬクマ模様を見ることができます。弱い母親は、他のクマが出てくると、せっかく捕らえたサケをおっぽり出し、子グマまで置いてけぼりにしかねない勢いで逃げていきます。写真の母グマは、昨秋、この川では最強といえる母親でした。母が強いと子グマまで強気で他の親の子グマたちにえらそうな態度で臨むのはお愛嬌でした。
冬眠間近、晩秋の夕陽に照らされたこの家族の姿は、幻想的でさえありました。もうすぐ知床は、見渡す限りの流氷に覆い尽くされ、海が消える季節。この親子も、深い雪の下の冬眠穴で、春を待つ眠りに入っていることでしょう。

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| 知床の自然環境を調査・研究している知床財団が、「知床キムンカイ・プロジェクト(仮称)」を始動させます。ヒグマをはじめ野生動物の高密度生息地である知床は、世界自然遺産の登録による観光客増加から、人間との接近事故が心配されています。プロジェクトは問題解決へ向け、北海道内の専門家らがチームを結成し、2006年度から3年計画にて実施。GPS(全地球測位システム)にて、ヒグマの行動追跡ほか、体毛を採取してDNAを分析し、親から独立したクマがどのように移動しているかなども調査します。AIR
DOは、ヒグマとヒトが共に生きる道を探る、安心して暮らせる知床を目指して、この活動を応援していきます。
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