SIRETOKO EYES





ヒグマが出て行った後の冬眠穴。雪穴のさらに奥に地面の下の穴の入口がある。
4月、知床連山の純白の衣にまだら模様が広るこの季節、ヒグマたちは長い冬の眠りから目覚めていきます。地下の穴の奥に眠るヒグマの体温は、少しずつ雪を溶かし、深い積雪を貫くトンネルが開いていきます。目覚める頃には雪面に口が開いていたり、あるいは、雪の表面には薄氷の層だけしかないこともあります。ある時、ヒグマはそこから突然ぼこっと顔を出すのです。数ヶ月にもおよぶ穴暮らしをへて、外の空気を深呼吸する気分は一体どんなものでしょうか?
かつての冬眠調査はたいへんでした。標識の電波を追い、雪山にスキーを駆って延々と登って行かねばなりませんでした。そして、クマをおこさないように慎重に穴の位置を確かめ、たぶんこの雪の真下にクマがいるに違いない!という地点を特定して印を付けます。いつ起きてくるか分からないクマの目覚めをず〜〜と待って、冬眠明けの時期を確定したものです。春の陽光の中、眼下に流氷輝くオホーツクの海を眺めながらの雪山行は、それはそれで楽しいものでしたが、体力と忍耐が必要でした。
今、私たちはカーナビにも応用されているGPSを搭載した標識でヒグマを追跡しています。GPS装置は冬眠中のヒグマのデータも自動的に大量に蓄積してくれます。私たちはヒグマ9頭について、2004年11月以来、12例(メス11例、オス1例)の冬眠の開始と終了、冬眠日数、冬眠穴の標高などのデータをとることに成功しました。従来の調査では、その年に冬眠穴の中で出産した母グマが最も遅くまで寝ており、子グマが十分に歩くことができるようになるゴールデンウィーク明けまで穴にいることがわかっていました。今回、GPSで詳細なデータをとったところ、最も遅くまで寝ていたのは、高齢の単独のメスグマでした。お婆さんグマの寝覚めは悪いのでしょうか? 新たな事実の発見や謎の解明がこれからも続きます。

  (財)知床財団 統括研究員・事務局長 山中正実
http://www.shiretoko.or.jp/


知床の自然環境を調査・研究している知床財団が、「知床キムンカイ・プロジェクト(仮称)」を始動させます。ヒグマをはじめ野生動物の高密度生息地である知床は、世界自然遺産の登録による観光客増加から、人間との接近事故が心配されています。プロジェクトは問題解決へ向け、北海道内の専門家らがチームを結成し、2006年度から3年計画にて実施。GPS(全地球測位システム)にて、ヒグマの行動追跡ほか、体毛を採取してDNAを分析し、親から独立したクマがどのように移動しているかなども調査します。AIR DOは、ヒグマとヒトが共に生きる道を探る、安心して暮らせる知床を目指して、この活動を応援していきます。

 
 
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