かつて、知床では国立公園内でも狩猟が許可されていた時代がありました。野生動物の密猟もみられました。その頃、ヒグマを観察することは本当にたいへんでした。奥地に分け入り、何日もねばってようやく姿を垣間見たものです。その後、知床の保護制度は充実。1988年には知床財団が設立されて保護管理活動が活発化。2005年には世界自然遺産に登録されるまでになりました。今や知床の保護体制は、国内トップレベルにあります。
保護の充実につれ、知床のクマたちは人を恐れなくなりました。のんびり歩き回るヒグマの姿を見るのは日常茶飯事です。今や知床は、イエローストーンなど世界の一流国立公園と何ら変らない野生の王国といえます。多くの人々がヒグマとの出会いを期待して集まっています。生態研究もAIR
DO支援事業「キムンカムイ プロジェクト」で飛躍的に進みつつあります。これは自然保護の輝かしい成功の証といえます。
一方、私たちは多くの悩みも抱えています。地域住民やたくさんの観光客との間には、しばしばトラブルも発生するのです。保護区におけるクマと人の折り合いの付け方。それは知床ばかりでなく、尾瀬や北アルプスなど国内のクマが棲む国立公園、そして、北米の国立公園でも共通の課題なのです。
今年、知床財団は創立20周年。私たちは記念イベント「ヒグマとともに生きる未来を考える」を行うことにしました。基調講演では、クマとの事故を防ぐためのバイブル「ベアー・アタックス」の著者、スティーブン・ヘレロ博士に、人を恐れないクマがもたらす光と影の両面についてお話しいただきます。また、記念フォーラムではアラスカなど国内外の保護区における事例を学びます。作家、椎名誠氏の講演や「キムンカムイ
プロジェクト」で作成したヒグマとの絵本のお披露目会などなど、多彩な行事を用意しています。この機会にたくさんの皆さんが知床にお集まりいただければ幸いです。

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